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「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」

ダイナミックというか、オマージュされたイタリア映画だったんですが、鋼鉄ジーグのイタリアでの人気を思わせる事などオタク文化の面でも非常に興味深い作品で、なおかつ意外なくらい正統派ヒーローものでした。
全然スマートじゃなくて、主人公はさえないおっさんで俊敏でもなく、今時の「スーパーマン」ではないのですが、だからこそいかにも普通の人間が発揮する超人的な力がリアルに感じられました。

キーになるのはそれぞれの孤独を抱えた男女。
孤独な一匹狼のチンピラエンツォ、天涯孤独になってしまった心を病んだ女性アレッシア、そして承認欲求をこじらせすぎて狂気じみた言動のジンガロ。オーソドックスであり、また現代的、そしてイタリア的でもあるのであろう事もこの映画の人間臭さの一因かと思います。
決して綺麗な映画でなく、人間の生々しさが隠されることなく描写されてますが、でも根本に人間に対する愛情、暖かい目線があるので温もりと、残酷な描写の向こうに、純粋で高潔なものが見えてくるのです。
こういうところは「マイ・プライベート・アイダホ」に通じるような気がします。

いかにもな今時のヒーローものではありません。
CGを駆使したすごいアクションがあるわけでもありません。
でも、日本で、永井豪というよりむしろその師匠の石ノ森章太郎が描いた孤独なヒーロー、等身大で自分の体を張って戦う、繊細で優しい心を持った、人間であって人間でない悲しみが、その完璧なオマージュが、その魂がここにありました。
ラストもむしろ仮面ライダー的であったと思えるのです。

というか、ジーグ自体があの頃のダイナミックものではいろいろ笑える作品ではあるのですが特殊な孤独なヒーローものでした。