結局GWを前に見終わってしまいました。
いろんな事を感じましたが、鉄人と鉄人が愛された時代への多大なリスペクトと深い愛情を感じる、後世に残すべき作品だと思いました。
漫画連載は50年代半ばからで、現在も愛されている漫画作品としてはすでに古典の域であり、その時代は私たちにとってもはや歴史でしかありません。しかしこの今川鉄人はそこがミソでした。
大きな震災に見舞われ、放射能に恐怖するこの現在、たくさんの悲劇や悲しみが細やかに記録され報道され、私たちはそれを知り、記憶する事ができます。
戦争と戦後というもはや実感をもって接する事の難しいこの時代にも、たくさんの人間が生きていて、戦争やそれに伴うたくさんの悲劇があった事、たくさんの思いが、情熱があった事、細やかに記録される事もなく報道される事もなく、時代と共に風化してしまいうかもしれなかったそんな細やかな記憶を、丁寧に物語に組み込み現在を生きる私たちにとっても忘れえぬ記憶にした功績は大きいと思うのです。
そしてこの時代を経て、この時代の情熱を思いを背負って今、私たちはこの国に生きているのだと、こんな時だからこそ切に思います。
故、横山光輝先生は、ご自分の作品のメディアミックス作品には興味をほとんどお示しにならなかったそうですが、この今川鉄人は楽しみにごらんになっていたそうです。私が今川鉄人を見たいと思ったのはそのエピソードを知ったからですが(文庫版の今川監督のインタビューにて)実際見てみて、それが理解できたような気がしました。
ご自分の作品というより、ご自分がその作品を描かれたその時代を懐かしくご覧になっていたのかもしれない、と。
平成の時代に鉄人を作るとこうなる、というもっとも良い見習うべき見本だったと思います。
しかしキャラ設定は本当に冒険だったと思いますが、最終的には原作の持ち味を殺すことなく生かしていたのが、今川監督の、鉄人に対する深い深い愛情と情熱と、執念すら伝わってくるようでした。一人一人が本当に愛情を持って描写されていたし、原作のエピソードを時代にからめたアレンジは見事でした。ギルバートとケリー、ジョンソン兄弟のエピソード、赤死館のエピソードなどの名作も原作の味を損なうことなく、シリーズ随一の鉄人に次ぐ人気ロボットと思われるオックスの扱いも、正直量産されたときは大安売りかよ…と思ったんですが、最後鉄人との戦いの記憶に支配されたあたりがたまらなく萌えました。オックスはそうでなければ…!
まあ、色々とちょっとGRとかぶるんじゃない、って思ったのは内緒だよ。